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変革の起こし方 ー 女性性・男性性から考える

更新日:2021年12月1日


COP26の会場の外、警官がガードする中で大規模デモを行う人々  写真)Reuters=共同

今月イギリスのグラスゴーで開催されたCOP26(一般的には国連気候変動サミットと呼ばれます)のような国際会議が開かれる時には、多くの環境NGO(非政府組織)や個人が現地入りし、協議の動向を監視します。また会場周辺はもちろんのこと、世界各地で会議に合わせて多くの抗議デモが行われます。


女性性と男性性の観点から見ると、こうした抗議行動は男性性です。自分の信じることを主張し、自分の外での変革を求めるからです。また歴史的にも抗議行動は権力をもつ上の者に対して下にいる者が行い、また上からの変革を求めることも多いのです。こうした縦の動きもまた男性性のはたらきと言われます。(→「女性性と男性性の定義」)



男性性による変革


男性性による変革へのプレッシャーがなくては、すでに権力をもっている人たちの行動を変えさせることが難しいのは確かです。事実、環境問題が深刻化し様々な科学的データにもとづく警告が出されても、世界の覇権を握る先進国の企業と政府は自らの地位と権益を守ることを優先し、長い間警告を無視し、環境問題自体が存在しないかのような態度さえとってきました。


それでも多くの人があきらめずにプレッシャーをかけ続けたこと、そして実際に異常気象が多発するようになって抗議の声が高まったことで、やっと企業もそれを擁護する政府も重い腰を上げざるを得なくなったのです。


ですからこうした男性性による変革の動きは必要だと思いながらも、私はこうした行動が新たな対立と暴動を引き起こしたりしないだろうかと心配になってしまうのです。そしてまた、デモをしている人たちは自分たちも問題の一部だとわかっているんだろうかと考えてしまうのです。



女性性による変革


女性性による変革は「内省」から始まります。そして自らが変わることで変革を起こすのです。それは本人が意図しなくても周りの人に影響を与え、水平的に広がっていきます。対立を生まず、変わろうとする自覚を伴うので本物の変革だという人もいます。


私は少なくとも環境問題についてはこの女性性による変革が重要だと思っています。なぜなら私たち一般市民も環境問題を生みだした原因の一部だからです。


先進国に住む私たちは、科学技術と資本主義がつくってきた物質的に豊かで便利な社会を歓迎して生きてきました。私たちは今、それがエネルギーと物質を大量に消費する生活であり、自然界や他者を搾取すること(→「エシカル・ファッション」で成り立っていることを知り始めました。

たとえば気候変動を引き起こしているCO2が大量の商品を作り 輸送するために排出されていることを知れば、私たち先進国の人間は大量消費という生活のあり方を変えなければならないはずです。私たち自身が資源や物を大事に使う生活に変わらなければ、いくら企業や政府に抗議をしても環境問題は解決しないでしょう。


一度手にした便利さ・快適さを手放すのは簡単なことではないはずです。それでも消費者である私たちの求めるものが変われば企業も政府も変わらざるをえません。何よりのプレッシャーになるのです。ですから私たちが変革への意識と行動をとることが大事だと思うのです。



Kさんの話


私の友人Kさんのお話をしましょう。彼女は地域活性化に取り組む社会企業家です。彼女は過疎化や産業の消滅に悩む地域に入り、地域内外の人々をつなぎ、彼らと共に地域の資源を活用して仕事を創り出すことで、「自分たちの力で地域をつくる」ことを目指しています。社会起業家としての彼女の仕事についてはまた別途ご紹介するとして、今回は彼女の気づきのお話です。


大学で建築を学び、大手百貨店で店舗の開発・建築、販売促進などの仕事を行っていたKさんは、会社の利益を上げるためにイベントを仕掛けて消費をあおり、おカネをかけた内装を作っては壊し、得た利益も結局は株主に行ってしまうような仕事に疑問を感じて立ち止まります。そして消費社会に代わる本当に豊かな経済社会とは何だろうと考えた末、地域とその活性化の必要性にたどり着きます。


こうしてKさんは安定した大企業での仕事を捨て、何の保証もない個人による草の根の地域活性化の仕事に飛び込むのです。まだ1990年代。IT革命や金融経済の急成長の中で経済のグローバル化が進んでいた時代でした。その陰で進む地域の荒廃に対する関心は決して高くはありませんでした。


Kさんが手がける小田原市片浦地区の「食とエネルギーの地産地消プロジェクト」 写真)小田原市HP

そんな中、一人で地域活性化の仕事を始めた彼女は間違いなく信念の人ですが、彼女はそうした気負いをまったく感じさせません。地域の人たちが変わり、地域が活気づいていくのを共に喜び楽しんでいるのです。彼女はそんな風に自分が変わったきっかけを話してくれました。


「私もかつては脱原発を訴えるデモに参加したり、資本主義を批判するなどして、何とかこのおかしい世の中を変えたいと思っていました。でもある時、自分自身も原発でつくった電力を使い、資本主義的な要素もたくさんもっている存在だということに気づいたのです。『変えよう』というのは思い上がりでした。ですから私はまず自分自身を変え、それを自分の周りの小さな人間関係を通して広げていこうと思ったのです。それに『改革しよう』とか『変えよう』とすると、どこかに無理が生じてうまくいきません。それに気づいたあの時が、私が男性性から女性性に切り替わった時だったと思います。今私は、世界は『変えるもの』ではなく、人の縁を紡ぐことで『変わっていくもの』だと考えています。」



男性性と女性性と


いかがでしょうか。「内省(→自ら変わる)」「人とのつながり」「水平的なネットワーク」という女性性による変革は、対立や暴力につながりがちな男性性による変革よりも平和的で楽しいものに思えないでしょうか? 唯一の問題は時間がかかることかもしれません。ですから一人でも多くの人が環境問題を自らの問題としてとらえ、生活を変えることが重要だと思うのです。


アフリカや古神道では 男性性は火(縦)女性性は水(横)

繰り返しますが、私は男性性による変革を否定しているのではありません。何か理不尽なことに対して抗議の意思表示をすることは大事なことだと思っています。けれども環境問題を解決するためには、男性性だけでなく、いえ、むしろ根本的には女性性による変革がどうしても必要ではないかと考えています。

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